2008年10月9日木曜日

徳本峠(とくごうとうげ)

 JR松本駅には松本電鉄が併設されています。この松電で新島々までいく。そこから25キロほど歩いて上高地に入るコースが、自動車道路が整備される前の入山コースです。
 このコースは、険しい登山道ではありません。新島々から山道までまず1時間ほどテクテク歩きます。とにかく歩く。山間から流れ下る小川沿いにある自動車道、といっても車一台通るのが精一杯な道です。そこを歩く。そのうち山の麓にたどりつきます。ここからが山道です。樹木がうっそうと生茂る山の中に入ります。沢もあります。そこの水は冷たくて美味しい。登ったり降りたりしながらとにかく前進。ボクは釣りをしないので分かりませんが、途中、岩魚小屋という小屋があります。炭焼きの跡もあります。その昔、この道が地元の人たちの生活道になっていたのだろうと思います。とにかくそんな森の中を歩くのです。鳥のさえずりや名前も分からないチョウがひらひらと舞っていたりします。最後の2時間ほどは、くねくねとかなりの高低差になりますが、とにかく登る。そんなコースです。
 繁みからゴソゴソと音が聞こえます。ひょいとカモシカが顔を出します。ニホンカモシカです。生きています。動いています。テレビや動物園のそれではありません。木々の上の方でキィ、キィと泣き声がします。ニホンザルです。十匹くらいですか。彼らも本物です。
 正直、たまに出かける人間にはかなりこたえます。上げる足が重くなります。汗も吹き出ます。それでもここまで来た以上、歩き続けるしかありません。普通、上高地から下山するのは楽なんですが、入る時に使うコースではないですね。マイナーなコースだからまず人には会いません。人気のある山には登山シーズン、アリの行列ができます。ここは決してそんなことはありません。とにかく歩き続けるのです。
 本格的な登山は、お金もかかるし、中々大変なのですが、そんなに装備も必要とせずに登れるのが嬉しい。とにかく5時間ほど山道を行くと徳本峠に到着します。その頃には、頭の中は空っぽですよ。峠のテッペンに足をのせた瞬間、穂高連峰が眼の前に広がります。これがまた嬉しくて何度もこの山登りをしてしまいます。5時間ほどの疲れが吹っ飛ぶというのはやっぱり爽快ですね。徳本峠には山小屋があります。缶ジュースくらいは売ってくれます。但し地上の倍の値段です。
 峠を越えると後はとにかく下り。かなり急な下りですが、特段な装備がいるわけではありません。足の関節が笑い出します。1時間ほど駆け下ります。すると明神へ出ます。ここまで来ると旅館やホテルがあります。人の匂いがします。さらに30分歩くと小梨平です。
 河童橋、大正池とそこは上高地の中心です。立派なホテルもあります。ここまでバスがあります。だから普通、7時間以上もかけて歩いて上高地に入る人はいません。穂高連峰や常念,槍なんかに登る場合でも普通、ここまでバスでやってきます。穂高縦走なんかだとライチョウやハイマツが見られ、眺望も素晴らしいパノラマです。
 徳本峠越は、自然とゆっくり過ごすには理想的な登山道です。
 上高地には銭湯もあります。疲れた体を休めるには最高です。(しかた)

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